18世紀後半の産業革命から始まった化学工業。今回は、第1期:近代化学工業の基盤成立の時代の後半です。火薬や肥料の原料「硝石」の人工生成と、発電機の発明に端を発する電気化学にまつわるエピソードを紹介します。
1. 火薬・肥料の原料「硝石」を求めて
ダイナマイトの発明
火薬の元祖「黒色火薬」は、14世紀の初めごろ、欧州で発明されたといわれています。当初は粉末の木炭Cと硝石(硝酸カリウム)KNO3の混合物でした(後に硫黄華が加えられます)。しかし各成分の比率は一定せず、品質には大きなバラつきがありました。
19世紀に入ると、木綿を硝酸HNO3で処理して作られるニトロセルロースや、ニトログリセリンが発見されました。それらは爆発的に燃える性質を持つものの、あまりにも不安定で火薬としての実用化には程遠いものでした。
1866年、スウェーデンのアルフレッド・ノーベル(Alfred Nobel)は、ニトログリセリンを珪藻土に吸収させたダイナマイトを発明しました。ダイナマイトの爆発には起爆装置が必要です。起爆装置には、熱や衝撃によって極めて容易に爆発する物質「雷こう」Hg(OCN)2を詰めた金属管が用いられました。
ダイナマイトは、起爆剤と分離しておけば衝撃によって爆発することはなく、安全に運ぶことができます。ダイナマイトが発明された時代は工業の拡張期にあたり、土木や鉱山事業に広く利用されたため、ノーベルは大きな利益を上げました。この利益の一部が彼の遺言によりノーベル賞の基金となったことは周知のとおりです。
硝石の人工生成を目指して
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2. 電気化学への展開
電気分解法の発明
ジーメンスによる発電機の発明で多量の電力の供給が可能となり、20世紀初頭には火花放電を使った空中窒素固定が実用化されました。これより早く1890年代には、食塩の電気分解を用いた塩素Cl2とカセイソーダ(水酸化ナトリウム)NaOHの製造が開始されています。
この頃、塩酸HClと塩素Cl2を副生するというわずかな利点により余命を保っていたルブラン法は、電気分解法の登場で完全に役割を終えることになりました。電気分解法の登場は、ソルベー法にも影響を及ぼしました。化学工業製品としては、炭酸ソーダNa2CO3よりもカセイソーダNaOHに高い需要があります。
電気分解法では、塩素Cl2とカセイソーダNaOHを直接得ることができるのに対し、ソルベー法でカセイソーダNaOHを得るには、生成された炭酸ソーダNa2CO3に消石灰Ca(OH)2を作用させる工程が必要となります。こうして、ソルベー法も次第に電気分解法に、置き換えられていきました。現在ではガラス原料など、炭酸ソーダNa2CO3そのものを目的とする場合に限って、利用されています。
有機合成化学工業の誕生
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3. 世界と日本の化学企業の設立
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