非鉄系鋳造材料の種類:鋳造加工の基礎知識4

鋳造加工の基礎知識

更新日:2017年12月28日(初回投稿)
著者:ものつくり大学 技能工芸学部 製造学科 教授 西 直美

鋳造材料は、鉄系と非鉄系に分類されます。前回は、鉄系鋳造材料を紹介しました。今回取り上げるのは、非鉄系鋳造材料です。銅合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金について、詳しく紹介します。

1. 銅合金の種類と性質

銅合金による鋳造品(銅鋳物)の特徴は、電気伝導、熱伝導、耐食性、強度、耐摩耗性、軸受特性に優れ、鋳肌がきれいなどです。銅合金の鋳造法として、最も多く用いられるのは砂型鋳造です。その他にも、重力金型鋳造、ダイカストなどがあります。銅鋳物には大きく分けて、純銅鋳物、黄銅鋳物、高力黄銅鋳物、青銅鋳物の4種類があります(表1)。

表1:主な銅合金鋳物の種類、特徴、用途
種類 JIS 記号 特徴 主な用途
純銅鋳物 CAC101、
102、103
  • ・導電性、熱伝導性および機械的性質に優れる
羽口、大羽口、冷却板、熱風弁、電極、ホルダ、一般機械部品など
黄銅鋳物 CAC201、
202、203
  • ・ろう付けしやすい
  • ・鋳造性に優れる
フランジ類、電気部品、装飾用品、給排水金具、建築用金具、一般機械部品、日用品・雑貨品など
高力黄銅鋳物 CAC301、302
  • ・黄銅鋳物より強さ、硬さに優れる
  • ・耐食性、じん性も良好
舶用プロペラ、プロペラボンネット、軸受、弁座、弁棒、軸受保持器、レバー、アーム、ギヤなど
CAC303、304
青銅鋳物 CAC401、402、
403、406、407、
408、411
  • ・鋳造性、被削性、耐圧性、耐摩耗性、被削性に優れる
軸受、バルブ、ポンプ胴体、電動機器部品スリーブ、ブシュ、舶用丸窓、景観鋳物、美術鋳物など

・純銅鋳物

純銅鋳物は、純度の違いにより、さらに3種類に分けられます(CAC101、102、103)。優れた熱伝導・電気伝導率を生かして、架線金具、電気機器の部品全般、電極ホルダーなどに使用されます。

・黄銅鋳物

黄銅鋳物は、銅 Cuと亜鉛 Znの合金で、真鍮(しんちゅう)とも呼ばれます。鋳造性に優れ、耐食性や耐磨耗性などの性質も備えています。主な用途は、電機部品、計器部品、建築金具、日用品、雑貨品などです。黄銅鋳物に、アルミニウム Al、鉄 Fe、マンガン Mn、スズ Sn、ニッケル Niなどを添加したものが、高力黄銅鋳物です。耐食性や耐磨耗性に優れた合金で、船舶用プロペラ軸受けなどに使用されます。

・青銅鋳物

青銅鋳物は、銅 Cuとスズ Sn、亜鉛 Zn、鉛 Pbの合金です。鋳造性、耐圧性、耐摩耗性、耐食性に優れ、鋳肌もきれいです。ただし、熱伝導・電気伝導性、機械的性質は、黄銅よりも劣ります。軸受、バルブ、ポンプ胴体などの機械部品のほか、景観鋳物、美術鋳物などにも使用されます。青銅にリン Pを添加したりん青銅や、鉛 Pbを添加した鉛青銅、アルミニウム Alを添加したアルミニウム青銅、ケイ素 Siを添加したシルジン青銅などがあります。最近では人体や環境に有害な鉛 Pbの代わりに、ビスマス Biやセレン Seを添加した合金も使用されています。

2. アルミニウム合金の種類と性質

アルミニウム合金鋳物は軽量で、熱伝導・電気伝導性、耐食性、機械的性質、リサイクル性に優れ、外観もきれいです。アルミニウム合金の鋳造法として、最も多く用いられるのはダイカストです。その他にも、砂型鋳造、重力金型鋳造などが用いられます。アルミニウム合金鋳物は、Al-Cu系合金、Al-Si系合金、Al-Mg系合金に大別されます。表2に、使用頻度の高いアルミニウム合金をまとめました。

表2:主なアルミニウム合金鋳物の種類、特徴、用途
合金系 JIS 記号 特徴 主な用途
Al-Cu-Si系 AC2A、2B
  • ・鋳造性に優れ、引張強さが高い
  • ・伸びが低い
マニホールド、デフキャリア、ポンプボディ、シリンダヘッド、自動車用足回り部品など
Al-Si-Mg系 AC4A 、4C、
4CH、AC4CH
  • ・耐食性、強度、じん性に優れる
  • ・AC4CHは非常に高い伸びを有する
マニホールド、ブレーキドラム、ミッションケース、クラッチケース、ギヤボックスなど
AC4CHは自動車ホイール、航空機用エンジン部品など
Al-Si-Cu系 4B、
ADC10、12
  • ・鋳造性に優れる
  • ・引張強さは高い
  • ・耐食性に劣る
  • ・伸びが低い
クランクケース、シリンダヘッド、マニホールドなどの自動車用部品、航空機用電装部品など
Al-Mg系 AC7A、
ADC5、6
  • ・耐食性、機械的性質、切削性に優れる
  • ・鋳造性に劣る
架線金具、船舶用部品、事務機器、航空機用電装部品など
Al-Si-Cu-Ni-Mg系 AC8A、8B、
8C、9A、9B、
ADC14、AC8C
  • ・熱膨張係数が小さく、耐摩耗性、耐熱性に優れる
  • ・鋳造性が良好である
  • ・AC8CはNi無添加
自動車用ピストン、プーリ、軸受、カーエアコンシリンダブロックなど

・Al-Cu系合金

Al-Cu系合金には、Al-Cu-Mg系合金、Al-Cu-Si系合金、Al-Cu-Ni-Mg系合金の種類があります。

Al-Cu-Mg系合金は、強じん性、切削性、電気伝導性に優れ、自転車用部品や航空機用油圧部品などに使用されます。Al-Cu-Si系合金は、機械的性質、鋳造性、被削性、溶接性に優れ、シリンダヘッド、マニホールド、足回り部品などの自動車部品などに広く使用されます。Al-Cu-Ni-Mg系合金は、高温強度、切削性、耐摩耗性に優れ、空冷シリンダヘッド、航空機用エンジン部品などに使用されます。

・Al-Si系合金

Al-Si系合金には、Al-Si系合金、Al-Si-Mg系合金、Al-Si-Cu系合金、Al-Si-Cu-Mg系合金、Al-Si-Cu-Ni-Mg系合金、Al-Si-Cu-Mg-Ni系合金の種類があります。Al-Si系合金は、流動性が良く、耐食性、溶接性に優れています。ただし、機械的特質、被削性に劣り、ケース類、カバー類などの薄肉、複雑な形状の鋳物に使用されます。Al-Si-Mg系合金は、鋳造性・機械的性質に優れ、エンジン部品、車両部品、船舶用部品などに使用されます。特にAC4CHは、不純物の含有が厳しく規制された合金で、自動車用ホイールなど保安部品に使用されます。Al-Si-Cu系合金は、耐食性に劣るものの、鋳造性、機械的性質に優れ、自動車用、電気機器用、産業機械用部品など広い分野で利用されています。ダイカストで使用されるADC10やADC12は、この合金系に属します。Al-Si-Cu-Mg系合金は、鋳造性、機械的性質に優れ、耐圧性が要求される部品に使用されます。Al-Si-Cu-Ni-Mg系合金、Al-Si-Cu-Mg-Ni系合金は、熱膨張係数が小さく、耐摩耗性、耐熱性に優れ、自動車エンジンのピストンに使用されます。

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3. マグネシウム合金の種類と性質

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