飛行機の燃費はどのように決まるか?:カーボンニュートラルの基礎知識(航空分野編)2

カーボンニュートラルの基礎知識(航空分野編)

更新日:2022年5月12日(初回投稿)
著者:東京大学名誉教授 未来ビジョンセンター 特任教授 鈴木 真二

前回は、国際航空に関するCO2削減検討の歴史を紹介しました。今回は、航空機の燃費改善を取り上げます。航空機が排出するCO2削減の最初の試みは、燃費の改善にありました。ただし、その主な目的は少ない燃料でできるだけ遠くまで飛ぶことにあり、必ずしもCO2削減を意図した訳ではありませんでした。燃料費を削減できれば、航空機の所有者、利用者にとって大きなメリットとなります。特に石油価格が高騰した1970年代以降、その要求は切実なものとなりました。今後は、CO2削減が燃費改善への大きな要因となるでしょう。

1.「より速く、より高く、より遠く」を目指した航空機開発

航空機の開発は、近代オリンピックの父と呼ばれるピエール・ド・クーベルタン男爵が提唱した、「より速く、より高く、より遠く」を目標にしてきたといえます。

図1は、1903年のライト兄弟の機体(1903 Flyer:フライヤー)から今日に至る主な航空機の飛行速度の変遷を示しています。飛行速度は急速に増加し、音速の2倍を超えるコンコルドのような旅客機や戦闘機も開発されました。ただし、時速1,000kmという音速に近い速度になると、急速に空気抵抗が増加し、また、衝撃波によるソニックブームという騒音問題も深刻になります。そのため、現在の旅客機は、全て音速以下で飛行しています。

図1:各年代で開発された航空機と飛行速度の関係

図1:各年代で開発された航空機と飛行速度の関係

飛行高度に関しては、ジェット機が開発され、成層圏(雲や降水などの天気現象が起こる対流圏より高度が上の領域)までの飛行が可能です。しかし実際には、翼の揚力で機体を浮上できる航空機であっても、極度に空気が薄くなる高度においては飛行が不可能になります。その意味で、「より速く、より高く」という開発目標は、既に達成されたといえます。

もう一つの目標である「より遠く」に関してはどうでしょうか。図2に、各年代で開発された機体の飛行距離を示します。

図2:各年代で開発された航空機と飛行距離の関係

図2:各年代で開発された航空機と飛行距離の関係

この図から読み取れるように、飛行距離は現在に至るまで増加し続けています。最近では、イギリスのヒースロー空港から、オーストラリアのシドニー国際空港、またシンガポールのチャンギ空港からアメリカのニューヨークのニューアーク空港まで、ノンストップで飛行できる旅客機が開発されています。その飛行は、17,000km、飛行時間は20時間にも及びます。このような長距離便を選ぶ人がいるかどうかは別として、技術的には、地球の反対側まで無着陸で飛行する旅客機が既に出現しています。ただし、これ以上遠くまで飛ぶことには、あまり意味がないかもしれません。その場合には、反対方向に飛べばよいためです。

2.飛行距離を決める技術的要素

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