カーボンナノチューブをどう分析するか:カーボンナノチューブの基礎知識4

カーボンナノチューブの基礎知識

更新日:2022年7月15日(初回投稿)
著者:名古屋工業大学 大学院 工学研究科 つくり領域 教授 川崎 晋司

前回は、カーボンナノチューブの理想と現実と題し、カーボンナノチューブが実用材料とはなっていない現実や、合成における問題点などを紹介しました。実際のナノチューブ試料には少なくない不純物が含まれ、直径分布(直径の異なるチューブが含まれること)もあります。また、合成条件により、炭素六角網面の発達具合も異なります。今回は、ナノチューブ試料の純度や品質などをどのように分析、評価するかについて説明します。

1. カーボンナノチューブの純度や品質の評価

カーボンナノチューブは、C60合成に使用した炭素棒を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)で観察した際に発見されました(第1回)。TEMで直接観察することで、チューブ径の大きさや分布、不純物がどの程度含まれているかを評価できます。しかし、TEMではどうしても情報が局所的となり、試料全体の評価とはなりにくいのが現実です。

ナノチューブ試料に、不純物としてどのくらいの触媒金属が含まれているかを調べるには、熱重量分析(TG)がよく利用されます。酸素を含む空気中などでナノチューブ試料を加熱していくと、酸化しやすいものから順に燃焼し重量減少が観測され、最後は触媒金属のみが残ります。これによって、試料中の触媒金属の残留量が求められます。また、TGでは触媒量以外にも、吸着水分量の評価から、炭素六角網面の発達具合まで評価することが可能です。

図1に示した2つの単層カーボンナノチューブ(SWCNT)試料のTG曲線では、試料の燃え出し温度が約200℃も異なり、結晶性の違いがよく分かります。また両者では、含まれている触媒金属の量も大きく異なることが、測定終了時の重量減少率から分かります。

図1:熱重量分析時の燃焼順序の模式図と実測した低品位・高品位SWCNT試料のTG曲線

図1:熱重量分析時の燃焼順序の模式図と実測した低品位・高品位SWCNT試料のTG曲線

2. カイラリティとギャップエネルギー(Katauraプロット)

グラフェンシートを長方形に切り取って丸めると、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)ができます。どのような長方形を切り取るかによって、チューブ径・端構造が変わるだけでなく、電子状態も変わることは、第2回で説明しました。また、このとき、ファンホーブ特異点間のギャップエネルギーは直径が小さいほど大きく、同じくらいの直径であれば金属のギャップは半導体のものよりかなり大きくなることも説明しました。この直径とギャップエネルギーの関係を図にまとめたものは、Katauraプロットと呼ばれています。Katauraプロット上の各点は、異なるカイラリティ(n,m)に対応しています。SWCNTの光学特性を理解する際に、とても便利なプロットです(図2)。

図2:Katauraプロット(左)と金属・半導体SWCNTの電子状態密度(DOS)図

図2:Katauraプロット(左)と金属・半導体SWCNTの電子状態密度(DOS)図

3. カーボンナノチューブ分析に便利なラマン分光法

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

4. カイラリティ分布を調べる方法

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。