バイオマスの基礎:バイオマスの基礎知識1

バイオマスの基礎知識

更新日:2019年12月6日(初回投稿)
著者:公立鳥取環境大学 環境学部 特任教授 横山 伸也

一定量集積してエネルギーやマテリアルに利用できる、植物起源の資源をバイオマスと呼んでいます。バイオマスは、化石資源に比べてエネルギー密度は低いものの、再生可能な環境負荷の低い有機性資源です。本連載では6回にわたり、バイオマスの基礎知識について解説します。第1回は、バイオマスの基礎と題し、バイオマスの特質や役割、資源量などについて解説します。さらには、エネルギー利用する場合、どのような方法があるかについても解説します。

1. バイオマスの特質

バイオマスは再生可能エネルギーの中でも、他とは違ういくつかの特徴があります。一つは、バイオマスのカーボンニュートラル性です。すなわち、バイオマスは光合成により大気中の二酸化炭素から作られたものなので、燃焼しても大気中の二酸化炭素濃度に変化を与えません。化石エネルギーをバイオマスエネルギーで代替すると、その分だけ二酸化炭素が削減できることになります。

次に、バイオマスの主要な構成元素は炭素なので、電気や熱以外に燃料やケミカルを製造することができます。これに対して、太陽光、風力、水力、地熱などは全て電気エネルギーや熱エネルギーには変換できますが、燃料やケミカルを製造することはできません。

もう一つの大きな利点は、国内資源がある程度利用できることです。人工林では、多くの本数の苗木を植え、木の成長を促すため、数年ごとに間伐(木の間引き)をします。間伐で発生する木材を間伐材といいます。この間伐材などをエネルギーに使う場合は、二酸化炭素削減に加えて、未利用木材資源の有効利用、森林の保全、雇用の創出、林業経営者の収入増などにも貢献できます。

2. バイオマスの役割

日本はパリ協定を批准しました。そして、2013年を基準年として、中間目標としては2030年までに温室効果ガスの排出を26%削減し、さらに2050年までに80%削減を目標に掲げています(図1)。2030年26%削減の中間目標は、既存の技術や施策の積み上げから策定された削減目標であり、目標達成への道筋はある程度見えているといえます。しかし、2050年の温室効果ガス80%削減は、2013年の14.1億tを2050年までに2.8億tまで削減することになります。これを実現するためには、既存技術の改善による目標達成とは次元の違う対策が必要と思われます。 経済産業省によれば、80%削減は目指すべきビジョンであると明記されており、日本としてはこの目標に向かってあらゆる努力をしなければなりません。

図1:地球温暖化対策推進本部決定による温室効果ガスの排出目標(平成27年7月)

図1:地球温暖化対策推進本部決定による温室効果ガスの排出目標(平成27年7月)

2013年度の温室効果ガスの排出量14.1億tのうち、エネルギー起源の二酸化炭素は12.4億tです。内訳は、産業部門が4.3億t、業務・その他部門が2.8億t、家庭部門が2億t、運輸部門が2.36億t、エネルギー転換部門が1億tとなっています。バイオマスとの関連では、エネルギー転換部門、運輸部門と家庭部門でのエネルギーをバイオマスで代替することができます。すなわち、化石燃料による発電をバイオマスで代替することと、ガソリン車やディーゼル車に代替できるバイオ由来の液体燃料の導入により、限定的であるものの温室効果ガスの排出抑制に貢献できることになります。

図2は、日本の電源構成の推移と2030年度の目標値です。2011年の東日本大震災までは、火力発電が65%、原子力発電が25%、再生可能エネルギーが10%でしたが、原子力発電が激減して2016年時点では2%になりました。経済産業省によれば、2030年ではエネルギーの多様化という観点から、原子力発電は20%~22%、再生可能エネルギーが22%~24%となっています。特に、再生可能エネルギーは、第5次エネルギー基本計画では主力電源化と明記されています。再生可能エネルギーの内訳では、バイオマスは3.7%~4.6%と比較的大きな割合を占めています。

図2:第5次エネルギー基本計画(平成30年7月)

図2:第5次エネルギー基本計画(平成30年7月)

3. バイオマスの資源量

図3は、農林水産省が推定した日本のバイオマス資源量です。廃棄物系と未利用系に大別されており、炭素換算量で示されています。既に利用されているバイオマスの実績値は、炭素換算で約2,400万tです。これに対して、目標値は約2,600万tです。下水汚泥、家畜排せつ物、食品廃棄物、廃棄紙などの廃棄物系バイオマスに加えて、未利用系の農作物非食用部と林地残材が主なる利用対象です。

図3:日本のバイオマス資源量(平成28年11月)

図3:日本のバイオマス資源量(平成28年11月)

目標値である2,600万tは、2018年に日本が輸入した原油約2億klに対して、炭素換算では20%程度に相当します。廃棄物系はそもそも、処理・処分しなくてはいけないものです。従って、廃棄物系バイオマスは適切な技術で経済性を担保しながら利用すべきものであり、さらには排出を抑制すべきものなので、大きなポテンシャルは期待できないと考えます。林地残材など、森林資源を利用して発電事業を行うことは、未利用資源の有効利用、森林保全や林業の活性化、雇用の創出などと深く関連しています。日本の間伐は、必要面積に対してまだまだ不十分であり、間伐面積が増えればエネルギーとして利用できる間伐材も増えることになります。

4. バイオマスのエネルギー利用体系

バイオマスのエネルギー利用技術は多岐にわたっています。バイオマスと一口にいっても、乾燥した木質系バイオマス、含水率の高い畜産系や食品系バイオマス、デンプンやオイル分を含むバイオマスなどさまざまです。従って、原料の物理的性質、化学的性質、含水率、灰分などの違いに応じた技術が求められます。

図4は、バイオマスのエネルギー変換体系図で、熱化学的変換と生物化学的変換、その他に大別しています。木材などのような乾燥したバイオマスは、発電、コジェネ、ガス化、熱分解などが適しています。含水率の高い家畜排せつ物や汚泥には、一般にはメタン発酵が適しています。糖分を含んでいるトウモロコシやサトウキビやキャッサバなどは、アルコール発酵に適しています。植物油のパーム油や菜種油は、バイオディーゼル燃料に適しています。木質系バイオマスのセルロース分をリグニンから分離した後、糖化してエタノールを製造するような技術開発も進められています。

図4:バイオマスのエネルギー変換システム

図4:バイオマスのエネルギー変換システム

また、バイオマスをガス化して合成ガス(水素と一酸化炭素の混合ガス)を製造し、これからジェット燃料を製造する研究開発が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)により行われています(NEDO)。

本連載では、多種多様の技術の中から、木質バイオマス発電、バイオガス発電、バイオエタノール、バイオディーゼルに加えて、最近注目されている藻類からのバイオ燃料生産に焦点を絞って解説をします。

いかがでしたか? 今回は、バイオマスの基礎について解説しました。次回は、木質バイオマス発電について解説します。お楽しみに!

参考:

  • 環境省、日本の約束草案(国連に提出する日本の約束草案は別添とする)、地球温暖化対策推進本部決定、平成27年7月
  • 経済産業省 資源エネルギー庁、第5次エネルギー基本計画、平成30年7月
  • 農林水産省食料産業局、バイオマス活用推進基本計画の進捗状況、平成28年11月