不静定問題を解くためには:建築構造力学の基礎知識7

建築構造力学の基礎知識

更新日:2021年12月10日(初回投稿)
著者:近畿大学 工学部 建築学科 教授 大田 和彦

本連載では、これまで静定構造物の解法について説明してきました。しかし、世の中の建築構造物の多くは不静定構造物です。なぜなら、不静定構造物の方が安全性と経済性に優れているからです。しかしながら、不静定構造物を解くには長い道のりが必要でした。今回は、不静定問題の基本的な考え方を解説します。また、不静定構造物を実用的に解くための基礎になるたわみ角法と、大次元不静定構造物の解法に有用なマトリクス法を紹介します。

1. 不静定問題を解くためには

不静定構造物は、構造物各部の抵抗力を解析するために、力の釣り合い条件の他に、別の条件(適合条件)を必要とする構造物をいいます(第2回)。不静定構造物には、外的不静定構造物と内的不静定構造物があります。例えば、図1に示すような1つのローラ支点と1つの固定端で支持された梁(はり)の反力数は4なので、力の釣り合い条件式だけでは解くことができません。

図1:外的不静定構造物の解法

図1:外的不静定構造物の解法

この構造物は、力の釣り合い条件式の他に、1つの適合条件式を必要とします。そのため、この構造物を1次外的不静定構造物といいます。また、図2のように、天井に固定された3本の紐(ひも)の先端を結びつけて重りを垂らす場合も、力の釣り合い条件式だけでは解くことができません。

図2:内的不静定構造物の解法

図2:内的不静定構造物の解法

この問題はトラスと同じように扱えるので、力の釣り合い条件式のうち、モーメントの釣り合い式は常に満たされています。そのため、力の釣り合い条件式だけで解こうとすれば、未知の軸方向力数は2以下でなければなりません。実際、1本分だけ取り除いて、2本の紐の先端を結びつけて重りを垂らすと、重りによる力は2つの紐に伝達され、その大きさは力の平行四辺形を使って容易に求めることができます。従って、この構造物も力の釣り合い条件式の他に、1つの適合条件式を必要とします。図2では、紐(要素)を1本増やしたので、この構造物を1次内的不静定構造物といいます。

最初に、図1の問題を考えます。この梁のローラ支点の鉛直反力をXとします。図1の梁は、2つの静定構造物に分けることができます。このとき、実荷重によるA点の鉛直変位v0とA点の鉛直反力による鉛直変位v1aは同値です。すなわち、v0+v1a=0が成り立ちます。

ここで、A点の鉛直反力の代わりに、単位荷重を加えたときの鉛直変位をv1とします。すると、単位荷重1のとき鉛直変位がv1であるのに対して、鉛直反力Xのとき鉛直変位はv1aです。これらは線形性(比例関係)が成り立つので、v1a=v1Xです。ゆえに、適合条件はv0+v1X=0であることが分かります。

また、図2の問題も同様です。図2の構造物も2つの静定構造物に分けることができます。このとき、実荷重によるO点の鉛直変位をv0、OB材の軸方向力をX、O点の軸方向力Xの代わりに単位荷重を加えたときの鉛直変位をv1とすれば、適合条件は図1の問題と同様にv0+v1X=0が成り立ちます。

このように1次不静定構造物では、1つの反力か軸方向力を余剰力Xとして適合条件式を立て、適合条件式から余剰力Xを明らかにすれば、あとは力の釣り合い条件式を用いて解くことができます。もちろん余剰力が増えれば、その数だけ適合条件式も増えます。ただし、解くことは可能です。このような余剰力を未知数とする解法を、応力法と呼びます。しかし、応力法は、一般に取り扱いが難しく、高次の不静定構造物の解法には不向きでした。

2. たわみ角法とマトリクス法

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