単純梁と片持ち梁の反力計算:建築構造力学の基礎知識3

建築構造力学の基礎知識

更新日:2021年9月1日(初回投稿)
著者:近畿大学 工学部 建築学科 教授 大田 和彦

前回は、建築構造物の理想(モデル)化を取り上げました。今回は、静定構造物の反力計算を解説します。反力を求めるには力の釣り合い条件を用います。そのため、初めに、力の釣り合いについて説明します。力の釣り合いは、構造力学の基本です。多くの人が、構造力学は難しいという印象を持っているようです。しかし、反力計算は、比較的単純な作業の連続です。学び初めの人は、頭の中で解こうとせず、分かりやすい図を描き、順序どおりに丁寧に解くことをお勧めします。

1. 力の釣り合い

一般に、力の釣り合いには、静的釣り合いと動的釣り合いの2種類があります。荷重がゼロから始まって徐々にその最終値に至るまで作用するとき、構造物はこれらの荷重下で変形し、その最終形に至ります。しかし、これ以後、構造物はその位置やその形状を変化させません。これを構造物の静的釣り合いといいます。

これに対し、荷重が突然作用すると、構造物は時間とともに異なる形状を強いられます。この構造物の各部は、ある時刻の外乱(例えば、大風や地震)下において釣り合い状態にあります。これを、構造物の動的釣り合いといいます。

本稿では、静的釣り合いを扱います。

いくつかの外力が作用する物体が静止しているとき、この物体に作用する外力は、釣り合い状態にあるといいます。力の釣り合い条件は、全ての力の総和がゼロであることと、任意点に関する全ての力のモーメントの総和がゼロであることの2つです。

数式解法では、力の釣り合い条件式は、以下の3つの方程式から構成されます。

  • ΣX=0:x方向の全ての力の総和はゼロである
  • ΣY=0:y方向の全ての力の総和はゼロである
  • ΣM=0:任意点に関する全ての力のモーメントの総和はゼロである

上記から、反力数3の構造物は、静定構造物といえます。その代表的な最も単純な構造物として、単純梁(たんじゅんばり)と片持ち梁(かたもちばり)があります(図1)。単純梁は、1つのローラ支点と、1つのピン支点で支持される梁をいいます。一方、片持ち梁は、一端を固定端で支持された梁をいいます。固定端とは反対側のもう一端で、反力のない自由端になっています。この他にも、静定構造物の種類はあるものの、本稿では単純梁と片持ち梁を用いて説明します。

図1:単純梁と片持ち梁

図1:単純梁と片持ち梁

2. 単純梁の反力計算

反力計算の手順を説明します。

  1. 1:与えられた問題に未知反力を書き込みます。このとき、反力の向きはどちらの向きに仮定しても構いません。学び初めの人は、鉛直反力を上向きに、水平反力を右向きに、モーメント反力を時計回りに取ってください。熟達して反力の向きが予想できる人は、予想される向きに仮定してください。
  2. 2:集中荷重が梁に対して傾いて作用するときは、その水平分力と鉛直分力を求めておきます。また、分布荷重はその合力に置き換えておきます。
  3. 3:3つの釣り合い方程式を用いて解きます。求めた値が正値であれば、仮定した向きに反力は作用しています。逆に負値であれば、仮定した向きと反対方向に反力は作用しています。
  4. 4:最後に、値と単位、および向きを記入します。

単純梁の反力計算では、一般に1つの方向において全ての力の総和がゼロであるという条件と、異なる2つの点に関する全ての力のモーメントの総和がゼロであるという条件を用いて解きます。ここでいう1つの方向とは、通常はx軸を指します。また、異なる2つの点とは、ピン支点とローラ支点を指します。これらの支点を通る力は、その点に関してモーメントを生じません。そのため、これらの支点を取り、方程式から未知反力をできるだけ削除することで、計算がしやすくなります。

それでは、図2に示す単純梁の反力を図3~5で求めてみましょう。

図2:単純梁の例

図2:単純梁の例
  1. 1:初めに、図3のように未知反力を書き込みます。一般に、水平反力はHを、鉛直反力はVを用いて表します。右下の添え字は位置を示します。
  2. 図3:単純梁の未知反力の書き込み

    図3:単純梁の未知反力の書き込み
  3. 2:梁に対して角度θを成す集中荷重が作用しているため、分力を求めておきます。作用点は梁上のC点です。
  4. 3:図4に示すように、釣り合い方程式を立て、解きます。力は方程式の左辺に、2つの向きのどちらかを正にとって列記します。通常は上向き、右向き、時計回りを、それぞれ正にとります。右辺はゼロです。
  5. 図4:単純梁の釣り合い方程式

    図4:単純梁の釣り合い方程式
  6. 4:最後に、値と単位、および向きを記入します。

なお、この問題では集中荷重の分力を求めました。ただし、図5に示すように、ピン支点(A点)、またはローラ支点(B点)から集中荷重の作用線までの垂線の距離を求めることによっても、鉛直反力を計算できます。

図5:集中荷重の作用線までの垂線の距離を求めて鉛直反力を計算する解法

図5:集中荷重の作用線までの垂線の距離を求めて鉛直反力を計算する解法

3. 片持ち梁の反力計算

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