負帰還増幅回路:アナログ電子回路の基礎知識3

アナログ電子回路の基礎知識

更新日:2022年8月26日(初回投稿)
著者:山梨大学 大学院 総合研究部 工学域 電気電子情報工学系 教授 佐藤 隆英

前回は、演算増幅器を用いることで、必要な電圧増幅率の増幅回路が簡単に設計できることを紹介しました。これは、演算増幅器を使った増幅回路が、負帰還増幅回路を構成することから得られる特徴です。負帰還は、増幅回路だけでなくアナログ電子回路のさまざまな場面で用いられる基本的な技術です。今回は、負帰還を増幅回路に活用した負帰還増幅回路が持つ優れた特徴を解説します。

1. 負帰還増幅回路の基本構成

負帰還増幅回路は、増幅回路Aと帰還回路βからなり、出力電圧の一部を、帰還回路を介して増幅回路の入力に戻す構成です。図1に、負帰還増幅回路の基本構成をブロック図で示します。増幅回路の入力にある加算器は、入力信号から帰還信号を引く減算器として動作します。増幅回路と帰還回路の電圧増幅率がAとβのときの負帰還増幅回路の電圧増幅率G(=vout/vin)を求めてみましょう。

図1:負帰還増幅回路の基本構成
図1:負帰還増幅回路の基本構成
増幅回路の入力信号をviとすると、vout

vout=Avi …式1

です。一方、viは入力信号と帰還信号βvoutの差であるため

vi=vin-βvout …式2

となります。式1、2からviを消去し整理すると、電圧増幅率G(=vout/vin)が

と得られます。Aβは、増幅回路と帰還回路からなるループを一周した際の電圧増幅率に相当し、開ループ利得と呼ばれます。増幅回路の電圧増幅率が十分に大きいとき、開ループ利得は1より十分に大きくなるため、Gは

と近似できます。つまり、式4は、負帰還増幅回路の電圧増幅率Gはβのみで定まることを示しています。増幅回路は半導体素子で実現されるため、電圧増幅率Aは製造時のバラツキや温度変化などで大きく変動するものの、負帰還増幅回路を構成することで、Aが変動した場合にも電圧増幅率Gは変動せず、一定値とすることができます。一方、βは1以下でよいため、帰還回路は抵抗などの受動素子で実現できます。負帰還増幅回路は、図1の増幅回路を-A倍の反転増幅回路とし、加算器の減算を加算としても実現できます。このときの電圧増幅率Gは

となります。この構成の負帰還増幅回路は、反転増幅回路となる場合を除いて、図1の負帰還増幅回路と同じ特性があります。

・非反転増幅回路との比較

前回紹介した非反転増幅回路を図2に示します。非反転増幅回路は入力信号と出力信号の位相が同じになる増幅回路で、演算増幅器を用いた回路の中で最も基本的な回路であることを説明しました。図1の加算器を用いた負帰還増幅回路と、図2の演算増幅器を用いた非反転増幅回路を比較してみましょう。

図2:非反転増幅回路
図2:非反転増幅回路

この非反転増幅回路では、出力電圧を抵抗R1とR2で分圧し、反転入力端子に戻しています。このことから、抵抗R1とR2が帰還回路を構成していることが分かります。帰還回路の電圧増幅率(1以下であるため減衰率です)はR1/R1+R2となります。図1では、入力信号と帰還信号の差の信号を増幅回路でA倍に増幅している一方、非反転増幅回路では演算増幅回路が差動増幅回路であるため、vinとv-の差を増幅しています。

よって、演算増幅器が加算器(減算器)と増幅回路の役割を果たしていることが分かります。演算増幅器の電圧増幅率は、通常100dB以上の大きな値であるため、演算増幅器の電圧増幅率に帰還回路の電圧増幅率をかけた開ループ利得は、1より十分に大きくなります。そのため、反転増幅回路の電圧増幅率は、式4で求めたように帰還回路の電圧増幅率の逆数のR1+R2/R1となります。演算増幅器を用いることで、負帰還増幅回路が簡単に実現でき、その電圧増幅率は帰還回路を構成する抵抗の値のみで定まります。

2. 負帰還増幅回路の特徴

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3. 負帰還増幅回路の実際

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