空調設備の汚染状況:空調設備の基礎知識8

空調設備の基礎知識

更新日:2022年2月22日(初回投稿)
著者:関東学院大学 建築・環境学部 建築・環境学科 教授 遠藤 智行

前回は、空調設備と省エネルギーについて紹介しました。今回は、空調設備の汚染状況と、それに対する保守管理の重要性について説明します。

1. 空調機・ダクトにおける汚染

細菌感染症のレジオネラ症に代表されるように、空調設備に関連した健康被害のほとんどは、微生物由来のものです。微生物は、外気などの環境中から空調機を介して室内に侵入し、時には空調機自体が微生物の温床となることもあります。特に、空調機内の温湿度条件は微生物の増殖にとって好環境であるため、適切な管理を行わなければ微生物の汚染が顕著になってしまいます。ここでは、空調機内の各部位における注意点を説明します。

・フィルタ

フィルタは、空調機の空気入口部に設置されており、外気に含まれる侵入物をろ過することで、室内に取り込む粒子状汚染物質の低減を行います。比色法(フィルタの捕集効率試験方法のひとつ)で50%捕集率を有するフィルタであればほとんどの微生物粒子を除去でき、また、中性能フィルタは浮遊細菌と真菌に対して80%以上の捕集率を示すことが明らかにされています。空調機への微生物の侵入を防ぐためにも、適切なフィルタを選定することが重要です。

・冷却コイル

冷却コイルとは、管内を流れる低温の水や冷媒によって、管の外側の流体を冷却する熱交換部をいいます。室内からの還気と外気による混合空気は、フィルタを通過した後に冷却コイルへ到達します。冷却コイルでは、冷房と同時に除湿も行われるため、冷却コイル表面は空気中の水分が結露して高湿度環境となります。そのため、冷却コイルから吹き出し口までの間は相対湿度が高くなり、微生物の増殖に好環境となってしまいます。実際、多くの細菌と真菌が生息していることが分かっています。また、冷却コイルの容量が冷房負荷に対して大きすぎると、冷房コイルが頻繁に停止してしまい、混合空気が十分に除湿されないことがあります。このように、冷却コイルの適切な設計と管理は、良好な室内空気質を維持するためにも重要となります。

・ドレンパン(排水受け)

ドレンパンとはエアコンの内部にあるパーツで、内部の結露水を受け止める皿です。冷却コイル表面に付着した水分はドレンパンが受け、ドレン配管を経由して排水されます(冷房時に家庭用エアコンの室外機から水が流れ出ていることと同じです)。ドレンパンに溜(た)まった水の中でもバクテリアやカビなどの微生物の増殖が報告されているため、水が溜まらない構造にしたり定期的な清掃を行うことが必要となります。

・加湿器

空調設備に加湿器が搭載されている場合、暖房時においても、水を扱う加湿器では注意が必要となります。表1に、代表的な加湿方式における殺菌作用や、停止中の微生物増殖の有無を示します。近年では気化方式の採用例が多くなっており、加湿器内で増殖した微生物が原因となって加湿器病を引き起こすことがあるため、加湿器の状態も常に管理することが大切です。

表1:加湿方式ごとの殺菌作用・停止中の増殖の有無
加湿方式 原理 殺菌
作用
停止中の
増殖
蒸気
吹き出し
方式
スプレーノズル式 ボイラーからの蒸気をノズルにより加湿
電熱・電極式 電気ヒータ・電極により水を蒸気にして加湿
水噴霧
方式
スプレーノズル式 ポンプの加圧で水をノズルにより加湿
超音波式 超音波振動により水を霧化して加湿
気化
方式
滴下式 水の滴下で加湿材を濡らし、通風することで加湿
回転式 加湿材を回転させ、水槽で濡らし、通風することで加湿

・ダクト

ダクトとは、気体が通る管で、給気や排気などを目的としてビル内や屋外に設置されています。大気中の空気とともに侵入した微生物や、空調機内で発生した微生物は、空気とともにダクトを通過するため、空調用ダクト内に付着・堆積する微生物粒子量は使用年数の経過とともに増加していきます。特に、還気(RA)ダクト内の細菌量・真菌量は、給気(SA)ダクト内のものと比較して5~10倍程度高くなる傾向が明らかになっています。給気ダクトを介して菌類が室内に侵入しなくても、その臭いが居住者の不快感を招くことがあるため、必要に応じてダクト清掃を実施することが重要です。

2. 冷却塔における汚染とレジオネラ症

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3. 空調設備の保守管理

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