3Dプリンタで出力した造形物の仕上げについて:3Dプリンタの基礎知識6

3Dプリンタの基礎知識

更新日:2021年12月9日(初回投稿)
著者:有限会社ニコラデザイン・アンド・テクノロジー 代表取締役社長 水野 操

前回は3Dプリンタで造形を行う際の注意点を解説しました。今回は最終回です。3Dプリンタで造形した出力物の仕上げについて解説します。3Dプリンタで出力した造形物は、その品質が十分であると考えられれば、もちろんそのまま使用することが可能です。場合によっては、あえて積層痕を残したまま使用するということもあります。しかし、私たちが身の回りで日常的に使う製品であれば、もう少し見栄えをよくしたいと考える人も少なくないでしょう。実際、光造形方式の3Dプリンタであれば、仕上げなしでも比較的滑らかな状態で出力される一方、FDM方式の場合はどうしても積層痕が目立ってしまいます。さらに、サンプル品として使いたいなど、見た目が大事な用途で使用するのであれば、なおさらです。また、機能検証目的でも、表面を滑らかにしておきたいという希望があるかもしれません。今回は、出力した後の表面の処理や塗装などについて紹介します。

1. 造形物表面の仕上げについて

一般に、商品として店頭に並んでいるプラスチック製品は、表面に光沢があります。それは、表面をきれいに磨いた金型に樹脂を流し込んで成形する射出成形という方法で作られているからです。それに比べて、断面を積み上げて作る3Dプリンタによる造形では、どうしても積層のしま模様が目立ち、ザラザラ感が気になってしまいます。これはFDM方式に限ったことではありません。光造形でも、積層痕は目立たないものの完璧ではなく、また、粉末焼結で作る場合も、仕上げをしなければ表面が粉っぽくザラザラしています。そこで、まず手がけたいのが、表面を滑らかにする処理です。なお、樹脂の特性はその種類によってさまざまなので、仕上げの方法も樹脂に合わせて行う必要があります。ここでは、FDM方式の材料として一般的なABSを題材として取り上げます。一般的な仕上げのフローを、図1に示します。

図1:一般的な仕上げのフローの例

図1:一般的な仕上げのフローの例

ステップ1:研磨処理

研磨作業は、出力後にサポート除去などの作業が終了して、表面を滑らかにしたい場合に行います。この研磨作業は、ただ磨けばよいというわけではなく、手順があります。また、使用する道具は、リューターやサンダーなどの電動工具ではなく、紙やすりなどを使用するのがよいでしょう。電動工具を使い慣れていないと、微細な形状まで一緒に削り取ってしまうことも考えられます。

紙やすりを使って仕上げる場合、一般的に目の粗いものから細かいものへと変えながら作業します。例えば、最初に80番から200番程度の粗目の紙やすりで、大きな段差や不要な樹脂の糸や小さな出っ張りなどを除去していきます。これである程度、表面がきれいになってきたら、紙やすりを400番台から600番台など目の細かいものに変えて、同様の作業を繰り返していくという流れになります。

ステップ2:化学的処理

化学的処理とは、樹脂の表面を溶剤で溶かし、滑らかにするという方法です。この方法は樹脂の特性に依存し、比較的侵食されやすい樹脂であれば有効です。FDM方式で使用頻度の高いABSの場合には、アセトンがよく使用されます。ホームセンターなどでも、容易に入手できます。ただし、アセトンは人体に有害で可燃性もあるため、必ず換気のよい部屋で使用します。具体的な作業は、アセトンが入っている容器に、造形物を入れて含浸させるという流れになります。研磨作業が困難な場合には、作業の前にあらかじめアセトンを表面に塗布しておくといいでしょう。

ステップ3:仕上げ処理

上記の磨き作業の後に、ABS用の接着剤を薄く塗布するという作業をすることで、さらに表面を滑らかにし、光沢を出すことが可能です。接着剤にはさまざまな種類があるため、その材料に対応したものが必要です。また、模型用のサーフェイサーを造形物の表面に吹き付けることも、有効な仕上げ方法です。特に、最終的に塗装を考えている場合には、サーフェイサーでの仕上げをお勧めします。何もしていない状態の表面と比べて、格段に塗装する際の密着度(のり)が上がります。

ここで紹介した表面処理は、模型作りなどに慣れていないと面倒に思えるかもしれません。しかし、出力したものを作品にしたいのであれば欠かせないひと手間です。処理をしたものとしていないものでは仕上がりに大きな差が出てきます。塗装を考えていない場合でも、試してみても面白いでしょう。仕上げに使用する道具や素材に、特殊なものはありません。ホームセンターや模型店などで容易に手に入るものばかりです。

・光造形での出力後の処理

光造形方式の3Dプリンタでは、出力した造形物をIPA(イソプロピルアルコール、またはイソプロパノール)というアルコールに浸して、表面に残っている未硬化の樹脂を洗い流し、さらに必要があれば紫外線を照射する二次硬化という作業を追加します(図2)。しかし、かなり丁寧に処理をしたつもりでも、表面にベタついた感じが残ることがあります。そうした場合、ベビーパウダーを表面にふることでベタつきを解消することができます。表面が若干白く粉っぽい感じになり、あまり一般的な方法とはいえません。それでも、ベタつきが気になる場合には試してみてもよいでしょう。

図2:3Dプリンタで作成された造形物をUVランプ<で硬化させる技術者

図2:3Dプリンタで作成された造形物をUVランプで硬化させる技術者

2. カラー塗装する場合ついて

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